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外食業界で生きることは、人のために生きること!

起業のためのネット講義 外食業界で生きることは、人のために生きること! 株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志

カジュアルレストランを運営するグローバルダイニングで最短期間・最年少で店長に就任、数々の店舗で実績を残した後、2000年に28才で独立した古里太志氏。東京・麻布に2軒の人気ダイニングレストラン、銀座にホテルのメインダイニングをオープン、若手の実力派として注目を集めている。また、接客・サービスのブロとして、サービスコンサルタント業も行っている古里氏に、店舗作り・チーム作りノウハウを伺ってみました。

第5回 売上が下がったから単価アップ。常識では考えられない戦略の真意

売上が下がったから単価アップ。常識では考えられない戦略の真意

株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志1 号店の「 Furutoshi 」は、お陰様で人気店となり、予約が取れないレストランとか、遊び人の集まりなんていわれるようになりましたが、レストランバブルが弾けたオープン 2 年半後位から徐々に売上が下がりました。その時に、自分たちがやるべきことを真剣に議論しました。一店目オープンから 1 年後には 2 店目を出していましたが、いま自分たちがやるべきことは店舗展開ではない。もっと注目しなければいけないものがあるだろうと、 1 店目の中身を徹底的に追及しました。一番意識したのは、やはり料理の追及です。何があっても結局はそこです。いい食材にこだわり、美味しさを追及することで、料理人の腕も上がり、接客のスキルも上がっていく。扱っているものが違ってくれば、扱っている人も違ってくるのです。それで単価を上げました。店のレベルが上がってくると、お客さんもそれに対して一目置いてくれるようになるのです。普通は、お客様が減ってくれば、価格を下げるのでしょうが、逆の手を打ちました。もちろん、唐突に値上げしたわけではありません。自分たちの成長、レベルアップとともに価格をあげました。お客様に喜んでもらうためにどうすればいいのか。やはり、それは美味いものを追及すること。うわべや格好ではなく、何をサービスとしてやっていかなくてはいけないのか、どういうところにこだわらなければいけないのかということの研究を徹底的に皆がやってくれました。お客様にしてみれば、支払った額以上に満足ができれば、必ずリピートしてくれるはずです。

株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志僕は、その頃からサービスコンサルタントとして、他社にサービスを教える仕事をしていたので、僕が毎日現場に出るというわけではありませんでした。他の仕事をやりつつ、自分も勉強して、会社に持ち帰り、皆と切磋琢磨をする。僕がやれることは、現場に出ることではなく、別のところで学んできたことを活かして、全員のレベルアップをすることだと思うんです。僕が目立ってはいけないんです。僕がそうしてもらえたように、やれる人間にはどんどんやらせて伸ばしていきたい。それを続けてきたからこそ、店をやってこられたと思います。売上が下がったからと店舗展開を広げていたら、足もとが見えなくなって、潰しては出しての繰り返しになっていたかもしれないですね。

sky3店目の 「 sky 」 は、4年ぶりの新規出店になります。アメリカをはじめとする海外では、いまホテルが注目されています。ホテルの盛況ぶりを見て、ホテルのレストランをやりたいと思っていた時に、丁度三井ガーデンホテル銀座から誘いをいただきました。ホテルのレストランは、ホテルそのものの価値を上げる役割を担っているのです。レストランに外から人が集まる、宿泊のお客さんは盛り上がる、ホテルの価値が高まっていくものです。街中のレストランとは、営業手法も違いますね。設備であったり、ロケーションであったりと付加価値が高いですから、それに見合うクオリティを最初から保持しなければいけませんから。そして、黙っていても宿泊客が来てくれるという利点にあぐらをかいてはいけないという意識を徹底させるからこそ、支持をいただけているのだと思います。今年7月には、同じスタイルで札幌にもホテルのメインダイニングを任せてもらう店舗を出店します。

僕が考える多店舗展開は、従業員のためのステージを作るという意味合いが強いです。従業員のスキルを上げるために、どういったことを教育していくのかということにフォーカスをしています。きれい事ではなく、会社が良くなれば個人も良くなるし、もちろん逆もある。ただ規模を拡大するのではなく、お客様がどのようなサービスを求めていて、どのような形で提供をすべきかを究めていくために新しい店舗を出すという感覚かもしれません。



古里 太志

古里 太志

1971年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京工芸大学建築学科を卒業後、グローバルダイニングに就職して数々の店舗で実績を残す。
2000年に西麻布のダイニングレストラン「Furutoshi」で独立、01年に麻布十番に「Pacific Currents 」、05年11月には銀座にホテルメインダイニング「sky」をオープン、いずれも人気店に育てる。
また、サービスコンサルタントとしても活躍、異業種との交流により外食業界に新たな手法を積極的に導入している。

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