外食業界で生きることは、人のために生きること!

起業のためのネット講義 外食業界で生きることは、人のために生きること! 株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志

カジュアルレストランを運営するグローバルダイニングで最短期間・最年少で店長に就任、数々の店舗で実績を残した後、2000年に28才で独立した古里太志氏。東京・麻布に2軒の人気ダイニングレストラン、銀座にホテルのメインダイニングをオープン、若手の実力派として注目を集めている。また、接客・サービスのブロとして、サービスコンサルタント業も行っている古里氏に、店舗作り・チーム作りノウハウを伺ってみました。

第4回 開業資金9000万円で作り上げた、理想通りの一号店

開業資金9000万円で作り上げた、理想通りの一号店

入社した時から起業を考えていましたので、毎月15万円ずつ貯金していました。新入社員の頃から、月350時間位働いていて、手取り30万円ももらっていたからできたことですね。起業を決意したのは28才の時。会社が上場したのをきっかけに、部下をはじめとするいろいろな人の後押しがあって、これはやるしかないなと…。それで、思いつきで飛び出しちゃったようなもの。物件も2 軒目で決めたので、場所探しにかけたのは都合3日ですよ。最初のダイニングレストラン 「 Furutoshi 」 は、西麻布で75坪ですからね。保証金も含めて、開業資金は9000万円にも上りました。

株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志 9000万円のうち、自分で貯めていたのは2000万円。それから、勤めていた会社の株を換えてできた資金が5000万円位で、銀行から3500万円を借りました。それで約1億円。大勝負ですよね(笑)。あの頃は、眠れなかったですよ。実績もないのに銀行が貸してくれた理由は、持っていた株を担保にしたこともあるのですが、22才の時から毎月15万円ずつ貯金を続けた信用を買ってもらえたからだと思います。一度も途切れたことがなかったですし、ボーナスをもらった時も100万円単位で貯金していましたからね。といっても倹約生活をしてたわけじゃないんです。よく後輩を連れて飲みに行ってましたし…。確か、25才の時に年収1000万円位はもらえていました。そういう時代であり、そういう会社だったというのが幸運でしたね。

人材に関しても充分なお金をかけたので、自分で思い描いていた店を作ることができました。22人のスタッフが創立メンバーで、独立の際に会社も興して、18人を社員にしました。社員でやるというのが、僕のポリシーです。今も、従業員90人のうち75名が社員です。固定費が高くて儲からないですよ(笑)。でも社員であることにはこだわりたい。一生この世界でメシを食っていくと決意して、レベルもスキルも向上を目指す集団でなければ、同じ夢を持って実行していくことはできないのです。

僕は、飲食業界の人材レベルをもっと上げなければいけないと強く思っています。事実、飲食業界のイメージは他業種に比べてもけっして良いものではないと思います。現に正社員になりたいと思っている方は年々減ってるし、体力勝負でたいへんだと考える人は多いはず。「当たり前」だと言ってしまえばそれまでで、時代は大きく変革してます。生意気な言い方ですが、もっと頭を使うこと。体だけではなく、頭をつかうこと、考えることを常にしていかなければ私達の仕事というのは単純な作業に陥りやすい職種なのです。でも接客業はもっと深くてお客様の為に考えることはいっぱいあるのです。お客様の目的意識 ひとつをとっても、店側の対応は一人ずつ変わっていかなければいけないですよね。それを考えたこともないような店舗ってありますよね。いま飲食業界にいる人には、まず、業界で働く楽しさを知ってもらって、それからお客様のために何をすべきか、それには自分がどうなるべきか考えることに挑戦してほしいと思います。

株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志 いま会社で目標としているのは、完全週休二日制ですが、飲食業ではまずありえないことです。二日休むためには、生産性のある仕事をしなければなりません。生産性がある仕事をするためには、どのような人を育て、どのように効率的に仕事をこなしていくかが必要で、これは、頭を使わなければできないことです。飲食業で働くことに、誰もが美徳を感じるようにするには必要なことだと考えているのです。何十日も休みなく働くような業種では、誰も来ませんよね。とはいっても、うちにも休みなしで働いている人がいますが、奨励しているわけではないです。スタッフの現状としては、下に行けば行くほど、月6日の休みを徹底している。上の人は自分の責任ですから、休めない時は月4日しか休めない。時には、月1日しか休めないこともあります。でも、そうやって店長が頑張っている姿を見せることも時には必要です。その姿を見て心を打たれて、皆が店のために頑張ることもありますからね。しかし、それが常態化してしまったらバカバカしい。飲食業界が魅力ある職場であるということを誰もが心掛けて実践していかないと、人材がさらに不足して業界が弱体化する一方になるかもしれません。これから起業しようという方も気に留めてほしいと思います。



古里 太志

古里 太志

1971年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京工芸大学建築学科を卒業後、グローバルダイニングに就職して数々の店舗で実績を残す。
2000年に西麻布のダイニングレストラン「Furutoshi」で独立、01年に麻布十番に「Pacific Currents 」、05年11月には銀座にホテルメインダイニング「sky」をオープン、いずれも人気店に育てる。
また、サービスコンサルタントとしても活躍、異業種との交流により外食業界に新たな手法を積極的に導入している。

ページのトップへ戻る