外食業界で生きることは、人のために生きること!

起業のためのネット講義 外食業界で生きることは、人のために生きること! 株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志

カジュアルレストランを運営するグローバルダイニングで最短期間・最年少で店長に就任、数々の店舗で実績を残した後、2000年に28才で独立した古里太志氏。東京・麻布に2軒の人気ダイニングレストラン、銀座にホテルのメインダイニングをオープン、若手の実力派として注目を集めている。また、接客・サービスのブロとして、サービスコンサルタント業も行っている古里氏に、店舗作り・チーム作りノウハウを伺ってみました。

第1回 接客の面白さにのめり込み、月30日働いたバイト時代

接客の面白さにのめり込み、月30日働いたバイト時代

飲食業との関わりは、大学時代にバイトをしてからです。大学は、接客に向いてない人たちの集まりみたいな建築学科でした(笑)。自分がやりたいことを見つけるって、すごく難しいことで、それで悩んでいる人はいっぱいいるだろうし、まだやりたいことが分からないのに就職活動をしている人もたくさんいると思います。僕も同じで、高校時代は、ただ数学と英語が得意というだけでデザイナーになろうと建築学科を選びました。

株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志当時、たまたまトレンディードラマで石田純一がデザイナーの役をやっていて、「建築はモテるだろう!」と思ってしまったんです。だけど、実際に入ってみると自分には向いてなかった。机に向かって細かい仕事をやることが向いてなかったんでしょうね。ですが、親の金で大学に行かせてもらっているし、卒業しておくこともいつかどこかで役に立つだろうと思ったので、やりきる決意をしました。

食の仕事の原点になったのは、茅ケ崎にある「村さ来」です。フロア係でアルバイトをしたときに、“この仕事は、むちゃくちゃ楽しい”と感じてしまったんです。この気持ちは、どんなに高級な店で働こうが、どんなに高度なスキルを学ぼうが、絶対に忘れてはいけないもの。仕事=楽しい、ということが食の世界の醍醐味じゃないでしょうか。その頃の店長が、酒の楽しさと接客の楽しさ、飲食という仕事の楽しさを教えてくれました。ハマリやすい性格なので、バイトにのめり込みましたね。1ヶ月のうち、29~30日はバイトに入って、休みの日にも友達と自分の店に行ってましたね。それぐらい自分の店が好きだった。

バイトを1年半ほど続けているうちに、茅ケ崎の居酒屋は狭いなと感じてきました。決してバカにしているわけではなく、僕の接客に対する欲が高まってきたのです。居酒屋に接客サービスを求めてくるお客様は少ないんですよね。もっと揉まれたいと思い、横浜でバイトをすることにしました。僕は、お客様からエネルギーをもらったり、お客様から学ぶことで自分が磨けると考えていたので、そういう環境に自分を持っていくことが大事だと思っていたのです。それで、グローバルダイニングのカジュアルレストラン「ゼスト」でバイトを始めたのですが、またハマってしまいました。今度は、31日のうち30日バイトしていましたね。バーテンダーからスタートしましたが、当時は、トム・クルーズが主演した映画「カクテル」の影響でバーテンダー全盛期。女の子がカウンターにずらっと並んで、心の底から楽しく思いましたよ。

株式会社SEED-TANK 代表取締役/CEO 古里太志そこで出会った店長が、いまは代官山で居酒屋をやっていらっしゃいますが、また最高の師匠でした。接客のノウハウを教えてくれたり、アルバイトリーダーとして人の上に立つ難しさも学ばせてくれたり、いろいろなことやらせてくれる店長でしたね。どうも、僕は押さえつけられるのが嫌いな性格らしく、押さえられると伸びない。そのことを店長は分かっていたんでしょうね。何も言わずに好きなことをやらせてくれて、僕も店の中心になって、売上に貢献することができ、この仕事が本当に楽しくおもしろいものだと教えてもらったように思います。やはり、スポーツと同じで、始めた時に楽しいと教えないと長続きしないんです。「仕事だから、やらなきゃいけない」という環境になってしまうと、面白くも何ともないですよね。飲食店経営には、これが一番大切なことじゃないかと最近改めて感じています。自分の能力やスキルアップ、難しいことに挑戦するというのは、その下地があってはじめて意味を成すのではないでしょうか。



古里 太志

古里 太志

1971年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京工芸大学建築学科を卒業後、グローバルダイニングに就職して数々の店舗で実績を残す。
2000年に西麻布のダイニングレストラン「Furutoshi」で独立、01年に麻布十番に「Pacific Currents 」、05年11月には銀座にホテルメインダイニング「sky」をオープン、いずれも人気店に育てる。
また、サービスコンサルタントとしても活躍、異業種との交流により外食業界に新たな手法を積極的に導入している。

ページのトップへ戻る