「bene pesce(ベーネペッシェ)」などイタリアンレストランを国内外に14店舗展開する株式会社いっしょうけんめい 。日本企業ゆえCSR(企業の社会的責任)を守り、ビジネスゆえ利益を追求しなければいけない。事業拡大のためには権限委譲が必要と自ら社長を退任し会長に就任。飲食業での起業は簡単には勧められない、と一森会長は語る。辛口ながらも、自身の体験をもとにされたコメントを起業の参考にしていただきたい。
2002年8月に有限会社ディートを設立して、本当の意味で起業しました。会社立ち上げと同時に、心斎橋に1号店となる 「 bene pesce(ベーネペッシェ/現TORI bene)」 をオープンしました。“ bene = good ” ” pesce = fish ” という意味で魚介類を中心としたイタリアンの店でした。当初はカフェをするつもりでしたが、採用したシェフが洋食のイタリアンが得意でメニューもそうなりましたのでイタリアンの店になったのです(笑)。この頃は非常に苦しかった時期でした。共同経営の天満橋の店もうまく行かず売上も落ちていて、「 bene pesce 」 も最初の10ヶ月位は赤字でした。天満橋の店を止めることになったのですが、ひどいことに返済が滞っていて、1300万円近い債務を私一人で負うことになり、3年間で返済することになりました。この3年間は地獄でした(笑)。自分の給料はほとんどなく、店で寝泊りという状況でした。ただ、やればできるもので、厳しい状況下でもお客様に向き合ってしっかりとやることで、徐々に 「 bene pesce 」 も利益が出てくるようになり、予定通り、3年後には返済の目途も立ち、2005年4月には難波に 「 bene pesce 」 の2号店をオープンさせることができました。
2店舗目を出すにあたり株式会社化しようと考えていました。「 ディート 」 と言う社名もあまり好きではなかったので(笑)、併せて社名変更もすることにしました。この頃には社員旅行に行く余裕も出ていましたので、事前に、スタッフに新社名の宿題を出しておきました。行きのバスのなかで、多数決で決めたのですが、「 一生懸命 」 が多かったのです。ただ誰も漢字で書くことができなかったので、ひらがなで 「 いっしょうけんめい 」 となったのです(笑)。
当社は現在(2012年2月)、「 bene pesce Waikiki 」(米国・ハワイ)を含めて14店舗になりました。今後も積極的に出店をして行きたいと考えています。
では、多店舗化のためには何が必要か。いろいろとあるとは思いますが、私は 1~2店舗しかない時から自分の思いや計画、ビジネスにおいて自分が何を大事にしているかということをあらゆる形でスタッフに表現して、共有することだと考えています。例えば、「 ベーネ大学 」 を月に1回開講したり、英語を勉強するクラスをつくったり、ディベートをやるクラブをつくったり、合宿して勉強会を開いたり、フットサル大会を開催したりと様々な手法で実践して表現するようにしています。他にも給料袋に手紙を添えて毎月従業員に渡したりもしました。店舗数が増えれば増えるほどスタッフの役割が重要になってきますから、経営者とスタッフの方向性を合わせ、思いを共有することが大切だと考えています。
もう一つ忘れてはいけないことは、我々は企業人であるということです。ビジネスをやるなら利益を上げなければならない。利益を上げるために自分たちは働いているんだと言う認識をスタッフ全員が持つことが重要なのです。自分一人でできることは限られていますから、同じ目的や考えを持った仲間を増やす。つまりチームをつくりあげることが必要だと考えています。
株式会社いっしょうけんめい
代表取締役 会長 一森 春輝 (いちもり はるき)氏
1973年2月 三重県伊賀市出身
1995年4月 株式会社初亀入社
2002年8月 有限会社ディート(現 株式会社いっしょうけんめい)設立。心斎橋に「bene pesce(現TORI bene)」オープン
トリベーネ・ベーネペッシェ 難波店/アジベーネ・ピンツォクワルト 日本橋店/磯ベーネ・ピンツォクワルト 東梅田店/ベーネナチュラーレ 宝塚店/バンコメルカート 京橋店/サーモンベーネ 梅田店/アジベーネプラス 梅田店/ベーネ ペッシェwaikiki店/ベーネペッシェ 広島袋町店/べねスパゲッティ 阿倍野店