亜細亜大学では、2009年度から経営学部にホスピタリティ・マネジメント学科を新設する。ホテルやトラベルビジネスなど、いわゆるホテル観光学としてホスピタリティ領域を研究する大学はこれまでにもあったが、外食産業に特化した「フードサービスビジネスコース」が設けられているのが大きな特徴だ。フードサービスにおけるホスピタリティの重要性が叫ばれるなか、いかなるスキルとマインドを持った人材が育まれようとしているのかに注目が集まっている。
「やすらぎ」 や 「心の癒し」 が求められる現代社会においては、ホスピタリティ産業が果たす役割が拡大しており、対人的サービスを提供するビジネス領域も広がり続けている。そのホスピタリティ産業を担う高度な専門性とホスピタリティマインドの両者を兼ね備えた人材の輩出が亜細亜大学経営学部ホスピタリティ学科設立の目的である。
その教育方法の特色は、次の4項となっている。
ホスピタリティ領域を研究する学校は増えつつあるが、「 マネジメント理論とホスピタリティ実務をトータルに学べること 」 が同学科の意義だと大島正克・経営学部長は語る。「 ホスピタリティとマネジメントが合体している教育プログラムの例が少ないと思います。産業に貢献するには、マネジメントが必要なのは明らかです。ホスピタリティビジネス業界における “ マネジメント力 + 実務遂行力 + ホスピタリティマインド ” の3つの力を備えた人材を養成したいと考えています 」
そのコースのひとつにフードサービスビジネスが設けられているのは、人材不足の外食産業界にとっては意義深いことだ。同学科の前身である 「ホテル・観光講座」 のかなり早い段階から亜細亜大学ではフードビジネスを取り扱ってきただけに、歴史に裏打ちされたマインドや専門性に期待する関係者も多い。その具体的な教育プログラムの特徴を大島学部長は次のように説明する。
「 一般的な経営学と違うのは、学問的ではないということです。たとえば簿記であれば、ホスピタリティ・マネジメント学科では実業に合わせた簿記会計を学ぶのです。フード業界は弥生シリーズが多く使われているようなので、全員が弥生の簿記検定3級を取得します。普通の経営学部ですと、簿記原理だけで終わってしまいますが、ホスピタルの管理会計では、基本的なマネジメントから最終的な利益が出るまでの見方を学んでいくのです。より実践的な学習内容としては、メニュー開発の実践などもあります。フードビジネスは “消費者に飽きられる” という大切な要素があります。コスト戦略でいくのか、高価格でも品質で勝負するのかといった問題から、海外で新しい食べ物を発見して輸入するということも大切になるでしょう。また、店舗を展開する側としては中国進出の問題も考えなければなりません。巨大な市場に対して、どうやって日本の物を展開させ、会社として利益を上げるかというフード文化論的な課題も出てくるでしょう。実際に海外には行かないまでも、世界の動きを情報として提供していきたい。小さいエリアから大きいエリアまでの飲食戦略を考えられる教育プログラムにしたいと思っています 」
同学科から輩出されるのは、有能な店舗の1スタッフやアルバイトという人材ではない。スタートはそうかもしれないが、すぐにでも管理職になれるレベルを目指しているのである。就職後の具体的な仕事としては、レストラン経営、レストランのゼネラルマネジャー、レストラン店長および支配人、料飲部門マネジャー等を想定している。マネジメントができることを重視したカリキュラムが用意されているのである。
亜細亜大学
1941年 財団法人興亜協会(現学校法人・亜細亜学園)として、興亜専門学校を設立
1945年 日本経済専門学校と改称
1950年 学制改革に伴い日本経済短期大学に改組
1955年 亜細亜大学創立
一芸入試をはじめ、語学留学プログラム、スチューデントカンパニー・プログラムなど独創的な入試制度や教育プログラムを積極的に実施している。また、校名通り、アジアを中心とした国際教育に注力をしており、多くの留学生を受け入れる一方、世界各地域に多くの人材も輩出している。アジア、そして世界を舞台に活躍し、日本と世界との架け橋となる人材を育てている。
文: 貝田知明