亜細亜大学では、2009年度から経営学部にホスピタリティ・マネジメント学科を新設する。ホテルやトラベルビジネスなど、いわゆるホテル観光学としてホスピタリティ領域を研究する大学はこれまでにもあったが、外食産業に特化した「フードサービスビジネスコース」が設けられているのが大きな特徴だ。フードサービスにおけるホスピタリティの重要性が叫ばれるなか、いかなるスキルとマインドを持った人材が育まれようとしているのかに注目が集まっている。
亜細亜大学とホスピタリティ産業のつながりには歴史がある。1963年(昭和38年)当時の理事長であった五島昇氏は、東急電鉄社長としてヒルトン・インターナショナルと提携、日本初の外資系ホテル 「 東京ヒルトン 」 をオープンさせたのである。それに伴って五島氏は、ホテル学科設置の申請を試みたが、旧文部省から時期尚早と了解を得られなかった。そこで、1970年には、ホテル業をビジネスとして育成したいという願いを込めて、トラベルビジネスまで含めた授業科目の 「 ホテル・観光講座 」 を開設した。学部にこだわらず受講できる講座で、規定単位を取得した学生には修了証も交付しており、ホスピタリティ・プログラムと名称変更された現在に至るまで500人以上の修了生を生み出している。一方で、経営学部には、講座をより専門化した 「 ホスピタリティ特別コース 」 が設置され、さらに2004年からはホテル・トラベル・フードの3分野を有する 「 ホスピタリティ専攻(定員40名) 」 を設けていた。
一連の教育現場を見続けてきた経営学部長の大島正克教授は、ホスピタリティ・ビジネスに対する学生の意識や注目度が大きく変わったと振り返る。「 “1年生の早い段階からホスピタリティ・ビジネスを学びたい” という要望が多かったため専攻を設けたのです。コースと専攻の違いは、コースが経営学部に合格してから選ぶのに対して、専攻は入試段階で決めてしまうことにあります。専攻になってからの入試では合格者と入学者の数がほぼ同じです。一般的には、合格しても入学しない人を考慮して合格者を出しますが、ホスピタリティ専攻については入学率が非常に高いです。08年度までの5年間で平均96.8%に達しています 」
現行制度のホスピタリティ専攻では、1年時から専門科目を履修するので授業内容も厳しく、学生は毎日夜9時までみっちりと勉強・研究をしているという。合格者への通知を出すときに、“この学科についてはアルバイトができません” と知らせるほどだ。「 1、2年生の授業はとてもタイトです。しかし、それをやっておかないと、1年生から並行して始まる研修やインターンシップで行った先の企業へ迷惑を掛けてしまいます。しかし、モチベーションが高い学生が多いので、脱落することはありません。その結果、1期生は就職も順調で、約8割が関連する方面に採用されました 」 (大島教授)
なお、第一期生の主な就職先は以下の通り。ホテルニューオータニ、ホテルインターコンチネンタル東京ベイ、ミリアルリゾートホテル(ディズニーホテル)、東京ベイホテル東急、ホテルグリーンタワー、リゾートトラスト、東急リゾートサービス、明治記念館、ドトールコーヒー、クリエイツレストラン、JTB(4名)、JAL(フライトアテンダント)等。
長年の積み重ねからホスピタリティ専攻が誕生し、その一期生が就職で実績を残したのを機に、ホスピタリティ・マネジメント学科(定員 90名)が今春からスタートするのである。学科として、さらなる充実を図るべく、ホテルビジネス、フードサービスビジネス、トラベルビジネスに加えて、航空や鉄道などの 「 パッセンジャーサービスビジネス 」 、スポーツクラブなど会員制業態で提供するサービスを考える 「 メンバーシップクラブビジネス 」 の2コースも追加されている。40年近くに及ぶ実績と教育ノウハウを活かし、ホスピタリティ業界の新時代を担う人材を育成するのが同学科の使命となるのである。
亜細亜大学
1941年 財団法人興亜協会(現学校法人・亜細亜学園)として、興亜専門学校を設立
1945年 日本経済専門学校と改称
1950年 学制改革に伴い日本経済短期大学に改組
1955年 亜細亜大学創立
一芸入試をはじめ、語学留学プログラム、スチューデントカンパニー・プログラムなど独創的な入試制度や教育プログラムを積極的に実施している。また、校名通り、アジアを中心とした国際教育に注力をしており、多くの留学生を受け入れる一方、世界各地域に多くの人材も輩出している。アジア、そして世界を舞台に活躍し、日本と世界との架け橋となる人材を育てている。
文: 貝田知明