有名カフェバーを皮切りに、ラーメン店、居酒屋をはじめとする多くの飲食店のデザイン・設計を手掛け、経営サポート業務にも乗り出している株式会社エイアンドティー.ティ(a&t.t)の上木草平氏。
上木氏が世に送り出した店舗は、いまや日本全国に広がり、それぞれに繁盛店となって成長を続けています。“繁盛の仕掛け人”という異名を持つ上木氏から、これから起業を目指す皆さん、現在個店を経営する皆さんへ、繁盛店を作る条件を伺ってきました。
独立したいと思う人に考えていただきたいのは、自分がリーダーやオーナーとなってやっていく資質があるかどうかです。今は持っていなくてもいいですが、いろいろなことを吸収して、将来、立派な経営者になっていけるか。僕は、いつもそこを見るようにしています。判断基準はとても難しいですが、弊社に訪れる人々といろいろな話をしてコミュニケーションを取っていると、絶対に独立に向いていないと思う人が 10人に1人くらいは出てきます。飲食店をやるべきではないという人には、はっきりと 「 やめなさい 」 と言うようにしています。それから、もともとの資質があっても、今は “ 素質 ” がないなと思われる人には、少しずつ学べるけれど苦労するぞとお教えしています。
今、個人店に一番要求されているのは、イチ経営者としての才覚です。特に大事なことは、まず 「 自分に気付く 」 ということ。自分の今の能力や性格、それすらも分かっていない人もいます。ですから、弊社で開催している経営者向け勉強会では、心理療法のひとつである 「 交流分析 」 というものを導入して、自分がどのような性格なのか自己分析できるカリキュラムもあります。そして、自分の資質や性格を知った上で、特技を伸ばし弱いところを補う、スキルアップ型の勉強をしています。
また、この勉強会では、「 常に自分自身がすべての源であるという立場をとる 」 ことに意識を持てるよう徹底しています。そうでなければ真のリーダーシップはとれません。意識する方法の一例を紹介しますと、自分の現状において、うまくいっていることは何か、うまくいってないことは何かを参加者同士でディスカッションした後、「 でも、それは、すべてあなたが作り出していること 」 という気付きを引き出すのです。従業員が失敗する、育たない、辞めていくという現象も、それが、すべて自分の責任において作り出されていると自覚できなければ、良い経営者にはなれません。弊社でも現場でミスが起こることがありますが、それは、すべて僕が起こしているミス。スタッフ教育をしていなかったからに他ありません。
例えば、以前、床のフローリング材が3倍も届いたことがありました。あるスタッフが “ 坪 ” と “ 平米 ” を勘違いしたから起こったことですが、「 ミスしがちなことだから気を付けて! 」 ということを、僕がきちんと言っておかなければいけなかったのです。部下にそういうミスがあった場合でも、叱るのではなく、「 次回は気を付けようね 」 といった声を掛けるようにしています。そこで、怒鳴りつけるようなことをしたら、彼らのモチベーションだって下がってしまいますからね。経営者は 「 常に自分自身がすべての源であるという立場をとる 」 を自覚していなければいけません。
そして、経営者として次の4つをさらに意識することが必要です。
まずは、どこの世界でも言われていることですが、『 お客様本位の意識 』 。ただ、この場合のお客様というのは、お店に来て下さる言わば “ 外部 ” 顧客のことです。経営者としては、さらに、 『 内部顧客という意識 』 も持つべきです。内部顧客というのは従業員のこと。従業員も自分の幸せや仕事への満足感を欲しているお客様であるという考え方が求められるのです。
そして、『 社会的な役割を持つという意識 』 、『 経営品質を上げていくという意識 』です。
この4つを徹底してはじめて繁盛店の基盤が出来上がるのです。
上木 草平
1950年、石川県生まれ。1970年に東京の店舗内装会社に入社、84年に店舗の企画デザイン・設計施工を業務とするa&t株式会社を設立。一店一店、オーナーに合わせた店創りで数多くの繁盛店を生み出す。2003年には、物件探しや資金調達など初期段階から飲食店経営をサポートする株式会社a&t.t(エイアンドティー.ティ)を設立、日本全国に数々の繁盛店を誕生させている。
株式会社エイアンドティー.ティ 代表取締役