おもてなしの心をお客様に -株式会社Hugeが持つオペレーション力の源泉を探る-

おもてなしの心をお客様に 株式会社Hugeが持つオペレーション力の源泉を探る

外食店舗におけるホスピタリティは、企業ごとの思想や考え方がある。同じように、店それぞれの考え方があり、そこで働く人それぞれが異なる見解を持つものである。一概には正解が出せないからこそ難しいものであるが、正解がないからこそ、独自の魅力や価値を生み出すチャンスも秘められている。

今回は、オペレーション力に定評のある株式会社HUGE(ヒュージ)のケースを取り上げてみる。同社の「Cafe RIGOLETTO吉祥寺店」は、キッチンとホール の連携が高い顧客満足を生み出しており、2006年のオープンから激戦区の吉祥寺においても人気のイタリアンレストランとなっている。同店の日比野マネージャー(店長)と鈴衛チーフ(調理長)に同席をいただき、ホスピタリティに関するお話を伺うことができた。ホールとキッチン、それぞれの立場で同時に意見を聞かせてもらえる機会は貴重ともいえるので、店舗運営の参考になれば幸いである。

第3回 ホールとキッチンの相互理解が、お客様に響くおもてなしを生む

第3回 ホールとキッチンの相互理解が、お客様に響くおもてなしを生む

おもてなしの心をお客様に 株式会社Hugeが持つオペレーション力の源泉を探る―調理側の指導・教育では、どういうところに気をつけていますか?

【鈴衛氏】 常に勉強できる環境を作るように心掛けています。1ヶ月後にはどういう自分になりたいか、半年後、1年後はどうなっていたいかを聞き出したり、何も持ってない場合は目標を与えてあげる。次はピザをやってみようとか、足りない部分を強化するようにしています。

【日比野氏】 うちのキッチンは、顧客認知という面で結構すごいですよ(笑)。お客様から特注オーダーを受けることが多いのですが、「塩薄めで大盛りの野菜だけのパスタ」というオーダーを通すと、そのお客様のことをきちんと覚えてくれるんです。

―特殊なオーダーは基本的にすべて受けるのですか?

【日比野氏】 できるものは受け入れます。それがRIGOLETTOらしい料理であれば、キッチンと相談してお出しするという姿勢です。

おもてなしの心をお客様に 株式会社Hugeが持つオペレーション力の源泉を探る―そういった対応は、オープン当初から考えていたのですか?

【鈴衛氏】 できるときは極力対応しようと思っていました。ピークの時間帯に店長がメニューにないリゾットを売ってくることがありますが、そういう時でも、米から炊いて30分で何とかしています。

【日比野氏】 売る側としては、「お客様のためにこういうものを作りました」という姿勢を出して、ファンになってほしいと思っています。もちろん、料理だけではなく、ホールにいる私たちのメニュー提案の仕方やお見送りまでのサービス内容でもファンになってもらわなければいけません。そういうホールの考え方にキッチンが理解を示してくれているから、作ってくれるのだろうと思います。ホールが大したサービスを提供していないようだったら、キッチンも特殊オーダーなんて作ってくれないと思います。

【鈴衛氏】 メニューにないリゾットを米から炊くなんて一般的にはやらないでしょうが、お客様の要望に可能な限り応えることが勉強になると思います。

おもてなしの心をお客様に 株式会社Hugeが持つオペレーション力の源泉を探る―ホールの新人スタッフにも「特殊オーダーも受けるように」と教育しているのですか?

【日比野氏】 “受けるように” というわけではないです。受けられるかどうかの判断が未熟でできないわけですから、「そういうオーダーを受けました」という伝達をホール内でしっかりするようにしています。ホールで判断が難しければキッチンに聞いて、「こういうものならできる」というお店の判断をそのままお客様にお伝えするよう指示を出します。その感覚が身に付いてくれば、ある程度は自分で判断できるようになると思います。

【鈴衛氏】 キッチンとして何でも応えるというスタンスではありません。「メニューに載っていないですが、こういうものをお作りしましょうか?」というのではなく、お客様から「今日は、お米が食べたいけど、メニューに載っているパエリア以外に何かある?」「どうしてもリゾットが食べたい」といったオーダーがあったら、可能な限りお出しするという感じです。

―メニュー以外の料理も快く作るわけですね?

おもてなしの心をお客様に 株式会社Hugeが持つオペレーション力の源泉を探る【鈴衛氏】 心の片隅にある本音を言わせてもらえば、やっぱり面倒ですよ(笑)。ピーク時の忙しいときに、メニューにない料理をホールが受けてきたら「できるわけないだろ」と言いたくなります。でも、イヤな顔をせずに、一度挑戦してみようと思ったらできたんですね。「お客様がとても喜んでくれた」とホールから連絡が来たときに、その満足感を知ってしまったわけです。結果的に成長させてもらったわけですから、なるべく対応しようという姿勢になりました。

【日比野氏】 特殊なオーダーに対応できたことよりも、料金をもらっている以上、お客様がイメージするものに近かったのか、また食べたいと思える味だったのかということが大切です。ですから、料理へのご意見は必ず詳しくお聞きするようにしています。まずい料理は出してないという自負はありますが、どんな意見も恐れずに伺ってキッチンと情報共有しています。



Cafe RIGOLETTO
Cafe RIGOLETTO マネージャー(店長)日比野友子氏 チーフ(調理長)鈴衛将人氏

Cafe RIGOLETTO
マネージャー(店長) 日比野友子氏
チーフ(調理長) 鈴衛将人氏

http://www.rigoletto.jp/

日比野友子氏(写真下・左)
神奈川県出身。学生時代から飲食店でアルバイトを経験、大学卒業後にグローバルダイニングに入社。06年4月、ヒュージ入社とともにリゴレット吉祥寺店のオープニングスタッフとして参加する。08年11月にアシスタントマネージャー、同年12月からマネージャー(店長)職に。

鈴衛将人氏(写真下・右)
埼玉県出身。高校卒業後に上京、居酒屋でバイトを開始。サーフィンが趣味で、夏場は伊豆の寿司屋、冬はグローバルダイニングでアルバイトという生活を数年続ける。グローバルダイニングの店舗で料理長を勤めた後、05年9月の設立とともにヒュージ入社、リゴレット吉祥寺店に勤務。2年目から料理長となる。

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