寺岡精工 は2011年のHOTERES JAPAN(国際ホテル・レストラン・ショー)で、ファーストフード向けの新たなシステムを発表するという。2月22日に東京ビッグサイトでお披露目となる前に、ベールに包まれた新システムの概要について、寺岡和治社長から話を伺うことができた。当日は注目が集まると予想されるだけに、予備情報を仕入れた上で会場ではスムーズに実機を体験していただきたい。
「 Delious Mio 」 は、 料理の写真を載せたメニューシートを専用ペンでタッチして注文する直感的な操作法が特長のセルフオーダリングシステムである。本体は直径15cm位の円筒形で超コンパクト。壁際のデッドスペースなどにも設置できる。カウンタースペースを占有しないので、接客スペースの拡大にもつながる。
セルフオーダリングの流れは、①オーダー入力、②オーダーの準備、③ピックアップと支払いというのが基本。まず、顧客自身がメニューシートをペンでタッチして商品を決めて、入力を完了すると、ターミナルからオーダー伝票がプリントされる。顧客はオーダー伝票を持って席で待っていればよい。
入力完了と同時に、オーダーがキッチンモニターに表示され、店舗側はオーダーを準備。料理ができたら、顧客はオーダー伝票をピックアップカウンターに提示、支払いを済ませて受け取ることになる。
顧客は、混雑時の順番待ちや急がされるようにオーダーしてしまうプレッシャーから解放される。また、料理を受け取ってから席探しをするような心配がなくなるというメリットもある。店舗にとっては、POSでのオーダーテイクが無くなり、フロントの人件費が半減できる。
また、既存のPOSシステムにADD-ONできる仕様であるため、従来通りのオーダーテイクとの共存が可能となっている。
− 寺岡社長が考える 「 Delious Mio 」 のポイントをお話しいただけますか。
【 寺岡社長 】(以下、敬称略) 一番のポイントは、お店とお客様の双方がハッピーになるシステムといということです。 これまでファーストフード店のフロント業務は、お客様と店舗スタッフが一対一の釘づけ状態で行っていました。 お客様が何にしようかと迷っている時はスタッフは待っているしかありません。 ひとつひとつ考えながらオーダーするので、ここでの待ち時間は結構長いのです。オーダーが終わると支払いに移りますが、ここでもスタッフはお客様が財布からお金を探す間じっと待つことになります。支払いが終わるとスタッフが品ぞろえをしますが、今度はお客様が待つ番になります。 このように今のカウンター業務はスタッフが待っているだけの時間が半分、お客様の待ち時間が半分で構成されているのです。それならフロント業務からオーダリング作業を切り離して、お客様自身でやってもらおうと考えたのです。 Mioを使えばお客様が簡単にオーダーを入れられます。 これでスタッフの時間が半分になります。 その上、お客様はスタッフや後ろにいる次のお客様に気兼ねなくマイペースで食べたいメニューが選べます。 ちなみに、「 mio 」は、イタリア語で「私の」という意味。英語の「 mine 」にあたります。セルフオーダーをするターミナルなので「 mio 」と名付けまいた。
システム的には紙のメニューを使います。メニューを眺めながら、今日は何を食べようかと思いをめぐらすのは飲食店での楽しみのひとつです。 しかしこの時のお客様の頭の動き方はカラオケ店で選曲する時とは逆になっているんです。カラオケでは、歌いたい曲が先ずあって、それを探すわけですが、飲食店ではメニューをパラパラめくりながら決めるという動きになります。だからジャンル別に階層化されたメニュー画面を深堀していく " サーチ " 方式は飲食店では馴染みません。全体が一覧できる紙のメニューが一番いいのです。 それに、飲食店はどこでもメニューのデザインには知恵を絞っておられる、それならその資産を生かさない手はないと考えました。これはお客様にとっても嬉しいシステムだと思います。
このシステムは向きを変えれば店員さんのオーダーテイクにも使えるようにできているので、セルフはいやというお客様への対応も可能になっています。
− 飲食のシステムとしては今までになかった特徴的な本体デザインですが、どのような意図が込められていますか?
【 寺岡社長 】 「 おもわずさわりたくなるデザイン 」 を考えました。お客様にセルフで使ってもらう機器には、デザインが大事です。説明しなくても直感的に分かること、親しみやすいことを重視しました。ちなみに、丸みを帯びているのは、汚れにくい効果も考慮しています。汚れる要因がたくさんある飲食店で使うものですからね。
− セルフである以上、オーダーミスへの対応は不可欠ですが、どのようになっているのですか?
【 寺岡社長 】 ペンタッチで入力すると、注文した料理の商品名が本体にある液晶画面に表示されるので、そこで確認していただけます。ペンにスピーカーがついており、音声で確認しながらオーダーができます。最後にプリントされるオーダー伝票でも確認できます。
オーダー伝票の発行と同時にオーダー明細が厨房のモニターに表示されるので、オーダーの伝達ミスも防げます。即時にキッチンに表示されるので、すぐに準備に入れます。これだけでもお客様の待ち時間が減るはずです。受注後にパテを焼くような業態なら、より効果が出るでしょう。− 開発段階で苦労したことや問題となったことはどこでしょうか?
【 寺岡社長 】 既存POSとの連携です。POSシステムはどのお店でも長年いろいろと工夫されていて、試行錯誤の結晶として独自アプリケーションが存在しています。そのPOSまで変えてもらうのは、どんなに良いシステムであっても難しいですよね。今のPOSをどうぞそのままお使いくださいというのが我々の姿勢です。出力されるオーダー伝票の2次元コードをPOSのスキャナーで読んでもらえば、あたかも自分のキーボードで注文を入力されたかのようにPOSが理解してくれます。ですから、何一つ改変することなく、データをPOSに送り込めるのです。
− メニューシートの作成や変更について説明をお願いします。
【 寺岡社長 】 お客様の操作を考えたら、メニューシートの作り方は重要になってきます。例えばサラダを頼んだら、すぐ横にあるドレッシングを選べるようにレイアウトを工夫しなければいけません。弊社ではお客様からいただいたメニューのデジタル画像に特殊なコードを刷り込み、高画質のカラープリンタでオンデマンド印刷できる装置を導入しています。メニュー変更の依頼があればすぐに対応できます。
音声ファイルや商品マスターのメンテナンスは、我々の得意分野であるクラウドで行いますので、店舗でも、本部からでもお店のファイルをメンテナンスできます。さらにそれを自動化したいという要望があれば、お客様の本部システムでメニューを変えた際のデータを送っていただければ、クラウド経由で全店舗のMioに配信できます。新しいメニューファイルを伝送してもらえればいいのです。それを加工するのはこちらの仕事ですから、本部や店舗の方々の手間にはなりません。
− ファーストフードだけではなく、いろいろな業態で利用できそうに思いますが、将来的なことを含めて構想を教えてください。
【 寺岡社長 】 中食でも使えると思います。昼時に並ぶ弁当屋さんには最適ですね。カラオケ店でも喜ばれると思います。今後は、このターミナルで精算までできるようなことを考えています。電子マネーや現金で決済までして、商品だけをカウンターへ取りにいく。このスタイルは牛丼店に合っていると思います。お客様も待ち時間がなくなって喜ぶとおもいます。 しかし、券売機のようにオーダリングの部分と支払機を同じ場所に配置するようなレイアウトにはしません。同じ場所にすると、そこでの作業時間が長くなって、新たな混雑が発生してしまいますから、それぞれ少し離れた場所に配置するのがいいとおもいます。
− 最後に発売時期、価格を教えてください。
【 寺岡社長 】 HOTERESでの発表から発売開始です。数量にもよりますが、ターミナルは、1台当たり20万円を切りたいと考えています。 納期は、店舗ごとの調整があるため2~3ヶ月ほどいただく可能性があります。 特にキッチンモニターの画面デザインについてはお客様のご要望をお聞きしてカスタマイズを行いますので、時間をいただくかもしれません。ご了承をいただいた上で、ご検討を頂きたく思います。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏